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2023年10月26日 【御礼】管谷怜子ピアノリサイタル

昨日、白寿ホールで管谷怜子ピアノリサイタルが無事成功した。
ご尽力くださった皆様と聴衆の皆様に心から感謝申し上げます。
 ベートーヴェンピアノソナタ1番、ショパンバラード4番、リストピアノソナタロ短調。アンコールがショパンのエオリアンハープとシューマンのトロイメライ。
 ベートーヴェンとショパンはほぼノーミスで自分の音楽にも集中できた。全体にコンサートになると練習時よりもテンポが速くなり、しかも加速傾向になる。ベートーヴェンの1番は基本テンポが普段選んでいるテンポよりかなり速くいささか面食らったが絶妙のテンポ修正を繰り返しながら、この曲は文句なしに見事なできだったと思う。ショパンもいい。冒頭は比類がない。この半世紀、みんな遅すぎるが彼女は適切なテンポと適切なルバートを手に入れている。中間部の様々な主題変容は堂に入ってきた。コーダは少し走り気味で彼女特有の和声感を極めた壮大さに較べるとノーマルな演奏。
 後半のリストはいやあ大変だった(笑)最初3分は完璧。冒頭のダイナミズムは強烈。最初の関門である60小節過ぎからの急速オクターヴは世界最速かつ最強の打鍵かつノーミス。ここはライブとしてはリヒテルくらいしか同等の出来は聴いたことがない。ところがその後、彼女がいつも危険極まるチャレンジ(加速)をする箇所でちょいと破綻し、普段なんでもないところで飛んだり跳ねたり(笑) 多分録音で聴いたら名演なのでしょうが私としてはこの飛んだり跳ねたりが出てくると気が気でなくて音楽を聴くどころではなくなる。
別に解決法は簡単で、世界的ピアニストも含め、皆がやっている安全運転をすればいいだけ。1割遅く弾き、加速しなければなんのことはない。だが攻め続けて、自分の最高水準のチャレンジを安定させる道を選ぶ、それが管谷の宿命なのだろう。
 本番ではちょっとしたミスがきっかけでリハで1㎜単位できいていたコントロールが微妙にきかない箇所がかなり出てくる。録音では分らないと思うが会場ではわかる。
 そこは今後の課題。
 しかしそれにしても攻めの姿勢は強烈。デモーニッシュな鷲掴み。激烈な破局と甘美な陶酔の絶え間ない交叉を最大のふり幅で達成した。最後の急速オクターヴも世界で唯一人キーシンがライヴで聴かせたテンポ。これは笑う他ない凄さ。ただ最後の2小節で崩れる。キーシンは崩れない。この差を埋められるか。ここだってあと5%テンポを落とせばいいだけだし、それでもライヴでできる人は世界でほとんどいないのだが、彼女なら崩れない安定を達成できるときがくるでしょう。その時、彼女は音楽性とチャレンジと技巧の圧倒的な高さで世界の頂点に立つ。
 終演後、私のハンカチは汗でびっしょり。手に汗を握るとはこのこと(笑)

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